「これも書いておこう」。そう思って一行足す。翌日にもう一行。気づいたときには、CLAUDE.md は画面をスクロールしないと終わらない長さになっています。ビルド手順、禁止事項、前に失敗したこと、レビューで見る点、社内の決まり。どれにも、書いた理由がありました。
厄介なのは、そこから先です。長くしたはずなのに、肝心のルールが守られなくなる。禁止したはずの操作が通ってしまう。「ちゃんと書いたのに」と思いながら、また一行足す。この繰り返しに心当たりがあれば、この記事が役に立ちます。
先にまとめ
CLAUDE.mdは設定ファイルではなく、毎回読ませる引き継ぎメモです。長く書くほど効くのではなく、長いほど埋もれます。効かせ続けるコツは、足す前に置き場所を選ぶこと。毎回読ませたいのか、必要なときだけでよいのか、それとも確実に止めたいのか。この3つを分けます。
Claude Codeを日常的に使い始めて、指示書やプロジェクトルールを整えたい方向けです。インストール手順を探している方には向きません。
「書いたのに効かない」が起きる理由
Anthropicの公式ドキュメントでは、CLAUDE.mdはClaude Codeへ永続的な指示や文脈を渡すためのMarkdownファイルとして説明されています。この一文に、落とし穴があります。渡しているのは「文脈」であって、「強制」ではありません。
人の職場に置き換えると分かりやすくなります。CLAUDE.mdは、朝いちばんに読む引き継ぎメモです。「今日は在庫の棚に触らないでください」と書いてあれば、たいていの人は守ります。ただ、そのメモがA4で3枚あったらどうでしょう。全部読んで、全部覚えている前提の仕事は、そもそも無理があります。
だから、削除や送信や本番反映のような「絶対に止めたい操作」は、メモではなく別の仕組みで止めます。権限設定やhookがその役です。書いたから大丈夫、がいちばん危ない。
長く書くほど効くわけではない
AnthropicのBest practicesでは、CLAUDE.mdが毎回のセッションで読み込まれるため、広く使う情報だけに絞るよう案内されています。判断の目安も添えられています。消してもClaudeが間違えないなら、その行は切ってよい。
この基準は、実際にやってみると気持ちがいいくらい効きます。ほとんどの行は、消しても何も起きません。標準的な書き方の説明。半年前の一時しのぎ。もう存在しないフォルダへの注意書き。残るのは、コードを読んでも分からないことだけです。
残す判断: - これを消すと、Claudeが同じミスをしそうか - 新しいメンバーにも必要な文脈か - コードを読んでも分からない独自ルールか 消す判断: - 標準的な言語ルールを書いているだけ - 古い一時対応が残っているだけ - 長い手順書やチュートリアルになっている
上の4行を通すだけで、たいていの指示書は半分になります。減ったぶん、残った行が読まれるようになる。指示が効かないときに足すのではなく、まず減らしてみてください。足して直った例より、減らして直った例のほうが多いです。
迷ったら、内容の種類で置き場所を決める
とはいえ、消すのは怖いものです。せっかく書いたのに、と思います。ここは考え方を変えると楽になります。捨てるのではなく、別の棚へ移すだけ。判断の軸は1つで、毎回要るか、必要なときだけ要るか、それだけです。
| 内容 | 置き場所 | 理由 |
|---|---|---|
| ビルド・テストコマンド | CLAUDE.md | 毎回必要になりやすい |
| 独自の命名規則・禁止パターン | CLAUDE.md | コードだけでは分からない |
| デプロイ手順、レビュー手順 | Skills | 必要なときだけ読めばよい |
| 画面まわりだけのルール | .claude/rules | 対象ファイルを触ったときだけ効かせたい |
| 詳細なAPI仕様 | docsへのリンク | 全文を毎回読む必要がない |
右の列だけ読むと、分け方の理屈が一本だと分かります。毎回読ませる価値があるか。答えが「いいえ」なら、CLAUDE.mdの外へ出します。
逃がし先は3つある
Skillsは、呼ばれたときだけ読み込まれます。デプロイ、レビュー、障害対応。手順が長くなりがちな作業は、ここが向いています。10行を超えたら、もうSkill候補だと考えて構いません。
.claude/rulesは、対象ファイルを指定して効かせられます。画面まわりを触っているときだけ効くルール、という書き方ができる。範囲が限られたルールは、常駐させずにここへ置きます。
@importは、別のファイルを読み込ませる書き方です。ただし、importした中身は起動時に展開されます。便利だからと全部つなぐと、置き場所を分けた意味がなくなる。ここだけは気をつけてください。
CLAUDE.mdは入口。Skillsやrulesは、必要になったときに開く引き出し。この二段で考えると、新しいルールを書くときも迷わなくなります。
月に1回、棚卸しする
一度整理しても、指示書はまた太ります。AIへ任せる作業が増えるほど、古い注意書きや一時しのぎが沈殿していくからです。放っておくと、半年で元に戻ります。
- まず /context を見る。
何がどれだけ読み込まれているかを確認し、重い原因を特定します。 - 同じ意味のルールをまとめる。
「しないで」「避けて」の細かい否定を、短い原則ひとつに置き換えます。 - 手順をSkillsへ逃がす。
10行を超える手順は、CLAUDE.mdに置かない。 - 古い一時対応を消す。
いまのコードや運用に残っていない事情は、毎回読ませる必要がありません。
i-Styleでも、CLAUDE.mdは200行を目安に置いて、月に一度まとめて点検しています。超えていたら、手順はSkillへ、範囲の限られたルールはrulesへ。増やす前に、逃がす。この順番を決めておくと、点検そのものは10分で終わります。
会社で使うなら、最初は短くていい
チームで使い始めるとき、最初から完璧な指示書を作ろうとすると、まず長くなります。そして長い指示書は、人間向けの文書と同じ運命をたどります。読まれません。始まりは、事故を避けるための最小限で十分です。
最初のCLAUDE.mdは、これくらいで足りる
作業の前に必ず現状を確認する。本番環境と顧客データには触らない。テストが通らない状態で先へ進めない。判断に迷ったら止めて聞く。この4行から始めて、同じ失敗が二度目に起きたときだけ足していきます。
一度目の失敗は、たまたまかもしれません。二度目に起きたなら、それは仕組みの問題です。この線引きを持っておくと、指示書は必要なぶんだけ育ちます。
まとめ:指示書は、増やすより整える
冒頭の「これも書いておこう」は、悪い習慣ではありません。気づいたことを書き残すのは、むしろ正しい。問題は、書き足す先がCLAUDE.md一択になっていることです。
毎回読ませたいのか。必要なときだけ読ませたいのか。それとも、確実に止めたいのか。書く前にこの3つを分けるだけで、指示書は長いあいだ現役でいられます。そして、いちばん効くルールほど短い。これは人に対しても、AIに対しても同じでした。
よくある質問
CLAUDE.mdには何を書けばよいですか?
毎回のセッションで本当に必要な事実だけを書きます。ビルドコマンド、独自のコード規約、プロジェクト構成、同じ失敗を防ぐ短いルールなどが向いています。
長い手順書はCLAUDE.mdに入れるべきですか?
長い手順や特定作業だけで使うルールは、Skillsや別ドキュメントに分ける方が向いています。必要なときだけ読み込む形にすると、毎回のコンテキストを軽く保てます。
CLAUDE.mdに書けば危険な操作を完全に防げますか?
いいえ。CLAUDE.mdは文脈として読み込まれるもので、強制設定ではありません。確実に止めたい操作は権限設定やhookなど、別の仕組みで制御します。
参考リンク
- 参考: チャエン | デジライズ CEO 投稿(X / 2026年08月確認)
- 参考: How Claude remembers your project(Anthropic / 2026年08月確認)
- 参考: Best practices for Claude Code(Anthropic / 2026年08月確認)
- 参考: Explore the context window(Anthropic / 2026年08月確認)
- 参考: Skills(Anthropic / 2026年08月確認)
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