「結局、うちはどっちを契約すればいいんでしょう」。9月に入って、この質問をいただきました。中小企業のAI導入をお手伝いしている立場では、大きな発表が重なると出てくる問いです。
答えを先に書くと、性能で選ぶ段階ではなくなっています。9月1日にClaude Fable 5.1、3日にGPT-6 Astraが出て、表示価格も文脈の長さも横並びになりました。
差がついたのは、自分の契約で今日使えるかどうかと、どんな使い方をするかのほうです。性能表を眺めても決まりません。
先にまとめ
実務で効くのは3点です。月20ドル前後の入門プランでは、どちらも最上位モデルが素直に使えません。長い資料を抱えたまま使うと、価格の条件が分かれます。そして安全機構をゆるめた版は、両社とも審査つきの別枠にあります。
結論としては、いま片方に寄せず、作業ごとに振り分けるほうが動きやすくなります。1社に絞るしかない場合は、自分の契約でいま先に使えるほうを選んでください(2026年9月5日時点)。
同じ週に、横並びに見える2つが出た
まず並べます。Anthropicが9月1日にClaude Fable 5.1を、OpenAIが9月3日にGPT-6 Astraを発表しました。中1日です。
偶然にしては似すぎている、というのが最初の印象でした。APIの表示価格が100万トークンあたり入力10ドル・出力50ドルで一致し、一度に抱えられる分量もどちらも約100万トークンです。
トークンは文章を細かく区切った単位です。日本語ではおおむね1文字前後で1トークンなので、100万トークンなら数十万字ぶんの資料を一度に渡せる計算になります。
Astraのほうは、値上げしてこの価格に並びました。Artificial Analysisは、前世代のGPT-5.6 Solから2.5倍になったと書いています。一方のFable 5.1は、表示価格を据え置いたままキャッシュ読み取りだけを下げました。
| 項目 | Claude Fable 5.1 | GPT-6 Astra |
|---|---|---|
| 長い文脈での割増 | 100万トークンまで割増なし | 入力27万2千トークン超で請求全体が入力20ドル・出力75ドルへ |
| キャッシュ読み取り | 100万トークンあたり0.25ドル(従来の4分の1) | 入力価格の1割 |
| 提供の広がり方 | 発表当日から一般提供 | 限られた組織から段階的に |
| 安全機構をゆるめた版 | Claude Mythos 5.1(審査を通った組織のみ) | 高度なサイバー機能は審査つきの別枠 |
表示価格の一致だけを見ると同じに見えますが、条件のほうは分かれています。まず、性能の話を片付けます。
中立の指標では、差は数ポイントしかない
両社の発表資料は、それぞれ自社が強いベンチマークを並べます。そこで独立して測っているArtificial Analysisの数字を見ます。
先に言っておくと、この順位で決めないほうがいいと見ています。数値は指標の版が上がるたびに動きます。
2026年9月5日時点の比較ページでは、総合指標にあたるIntelligence IndexがFable 5.1で57、Astraの最大設定(いちばん長く考えさせる設定)で55でした。差は2ポイントです。
同じ指標でも、数日前の記事では差の開き方が違って伝えられていました。順位そのものを持ち帰っても、来月には合いません。
同じ名前のベンチマークでも、採点の仕方や試行の条件が違えば数字は動きます。両社の資料に並んだ数値は、そもそも同じ土俵で測ったものではありません。
速さも指標には表れにくいところです。最初の応答が返るまでの時間は、最大設定だとFable 5.1で約267秒、Astraで約464秒と記録されています。同じ価格帯の推論モデルの中央値は4秒弱です。
じっくり考える設定ほど待つ、という当たり前の話ではあります。ただ、この待ち時間も総合指標の数値には出てきません。
では、性能表で決まらないとして、何で決めるのか。ここからが本題です。
いちばん大きい違いは、自分のプランで使えるかどうか
実務でいちばん効くのが、この契約の区分です。そして、両社とも似たところに行き着いています。
月20ドル前後の入門プランでは、最上位モデルがそのまま含まれていません。ただし「使えない」の中身は2社で違います。
| 契約 | 最上位モデルの扱い |
|---|---|
| Claude Pro | Fable 5.1は月額に含まれない。使うなら従量課金クレジット(使った分を後から足して払う仕組み)が要る |
| Claude Max/Teamプレミアム席 | 週の利用枠の50%まで含まれる。超えると従量課金へ |
| ChatGPT Plus | 最上位設定のGPT-6 Proはチャットに出てこない。ChatGPT WorkとCodexの側でAstraが順に開く |
| ChatGPT Pro/Business/Enterprise | GPT-6 Proが順次提供される。ただし通数の上限があり、Pro 200ドルは週200通、Pro 100ドルは週50通、Business Standardは月15通、Business Premiumは週50通 |
Claude側は「追加で払えば使える」、ChatGPT側は「別のプランか別の入口に回る」。同じ月20ドルでも、行き止まりの形が違います。
月額を払っているのに画面のモデル一覧に出てこない、というご相談は実際にいただきます。設定の問題ではなく、契約の区分の問題です。
届く時期にも差があります。Fable 5.1は発表当日からAPIと主要クラウドで一般提供され、Claude Codeも同日の版で、Fableを選んだときに呼ばれるモデルを5.1に切り替えました。
Astraは9月3日に、限られた組織から順に配られ始めました。9月5日時点でAPIと上位プランまで広がっています。Plusを含む残りは順次です。
OpenAIは待たされる利用者への埋め合わせも出しました。中身は昨日のリセット権の記事にまとめてあります。埋め合わせが用意されたということは、届くまで待つ利用者が一定数いる配り方だ、ということでもあります。
契約の区分が分かったら、次は使い方です。表示価格が同じでも、請求は同じになりません。
表示価格が同じでも、長い資料を抱えると差が出る
調べていていちばん意外だったのが、この請求の話です。表示価格の一致は、短い文脈のうちだけでした。
OpenAIのモデル資料では、Astraは入力が一定量を超えると、その請求全体が上の表の割増価格へ切り替わります。閾値を超えた分だけ高くなるのではなく、まとめて上がる形です。
目安としては、日本語で本の3分の1から半分ほどの分量です。ここはAPIを従量課金で使うときの条件で、月額プランの画面から使っている分には請求は変わりません。
Fable 5.1のほうは、Claude Platformの資料を見るかぎり100万トークンまで割増がありません。長い資料を丸ごと渡す使い方では、ここが効いてきます。
もう1つがキャッシュ読み取りです。一度読ませた資料を、次の指示でもう一度参照するときの値段を指します。
Anthropicはこれを100万トークンあたり1.00ドルから0.25ドルへ下げました。前世代のFable 5と比べて、長く走らせる作業なら実際に払う額が最大45%ほど、標準的な作業でも約25%ほど下がるという説明です。Astraとの比較ではありません。
同じ社内規程や同じコードを何度も読み返させる使い方ほど、ここの比率が上がります。逆に、1回きりの短い質問を投げるだけなら、この差はほとんど出ません。
i-Styleでは、社内の利用をサブスクリプションの枠で回していて、従量課金は使っていません。ですから、請求書の側でこの差を見ているわけではありません。
ただ、長く走らせる作業と短い質問を分けて考える理由は、ここにもあると捉えています。そしてもう1つ、両社とも手元に配っているのは、いちばん強い状態のモデルではありません。
安全機構をゆるめた版は、両社とも審査つきの別枠にある
比較表にはまず出てきませんが、契約を決める前に見ておく価値がある話です。両社とも、安全機構をゆるめた版を誰にでも配ってはいません。
AnthropicのClaude Mythos 5.1は、Claude Fable 5.1と中身が同じで、安全機構の設定だけが違うモデルです。審査を通った米国の組織にだけ提供されると説明されています。
OpenAI側も同じ形です。Astraの高度なサイバー機能は審査つきの枠組みの中に置かれ、承認された防御側の組織へ段階的に開かれます。
つまり、一般に流通しているのはどちらも安全機構をかけた版です。手元で出る挙動が発表資料の印象と食い違うことがある。その理由のひとつがこれです。
その安全機構も、現場では無関係ではありません。Anthropicは、サイバーセキュリティの分野で、新しい安全機構はFable 5のときより60%少ない誤検知で済むと説明しています。
減った理由には、脆弱性の特定のような防御目的の作業を新たに認めたことも含まれると説明されています。いずれにせよ、止まったときにどう動くかを決めておく理由はここにもあります。
中小企業はどう決めるか
最後に、AI導入のご相談を受けている側から見た決め方を書きます。結論としては、いま片方に寄せる決め方を勧めていません。
性能差が数ポイントで、表示価格が同じで、どちらも数か月で入れ替わります。そこに賭けるより、乗り換えられる状態を保っておくほうが、あとで動きやすくなります。
1社に絞るしかない場合は、いま手元に届くかどうかで決めてください。使えない期間があると、性能差の数ポイントより先に業務のほうが止まります。
当てどころも分けておくと迷いません。同じ資料を抱えたまま長く走らせる作業は、キャッシュの値下げと長文の割増なしが効くFable 5.1へ回します。
その場で早く返してほしい対話は、どちらを使うにしても、いちばん長く考えさせる設定のままにしないことです。上で見たとおり、待ち時間が桁で変わります。
サブスクの枠と従量課金の線引きそのものは、Fable 5がサブスク枠に入ったときの記事で詳しく書きました。今回のFable 5.1も同じ考え方の延長にあります。
契約を決める前に確認しておきたいのは、次の5つです。
- check_circleいま契約しているプランで、最上位モデルが含まれるのか追加課金なのかを確かめる
- check_circle比較は表ではなく、自社の実際の作業を1つ選んで両方に通す
- check_circle長い資料を丸ごと渡す使い方があるなら、分量が増えたときに単価が切り替わるかを見る
- check_circle手順書にモデル名を直接書かない。「その時点で使える上位のもの」と書いて逃がす
- check_circle止まったときの逃げ道を決めておく。安全機構が正当な作業を止めることがある
つまずきやすいのは2つ目です。比較表を集めるところに時間をかけて、自社の原稿や自社のコードを一度も通していないと、いつまでも決まりません。
実際に通してみると、ベンチマークの順位と自社での使い勝手がずれることがあります。文体の好み、指示の通りやすさ、途中で止まる頻度。このあたりは総合指標には出てこないと感じています。
ここまでが決め方です。最後に、この2つを並べていちばん変わったと感じている点を書きます。
選ぶ対象が、モデルから契約に移った
数年前は、どのモデルが賢いかで決まっていました。いまは、どの契約なら手元に届くかで決まります。
残っているのは、プランの区分と、文脈が伸びたときの料金の条件と、安全機構をゆるめた版が審査つきの別枠にあることです。配布の順番も、そのプランに届くまでの時間差として残ります。
どれも性能表には載っていません。冒頭の「どっちを契約すればいいか」に戻ると、i-Styleでは、いま決め打ちしないことをお伝えしています。
作業を1つ選んで両方に通し、契約の区分を確かめる。それで十分です。半年後にまた同じような週が来ても、そのときは慌てずに済みます。
参考にしたソース
確認日はいずれも2026年9月5日です。価格と提供条件は随時変わります。
Anthropic公式: Introducing Claude Fable 5.1 and Claude Mythos 5.1
Anthropic: Claude の料金ページ(長い文脈の価格の扱い)
Anthropic ヘルプ: Claude Fable models on your plan
OpenAI公式: GPT-6 Astra: A new generation of intelligence
OpenAI: API の料金ページ(長い入力での価格の切り替え)
OpenAI ヘルプ: GPT-5.6 and GPT-6 Pro in ChatGPT
Artificial Analysis, GPT-6 Astra vs Claude Fable 5.1(比較ページ)
Artificial Analysis, Benchmarking GPT-6 Astra(2026年9月3日)
契約を変える前には、必ず各社の価格表とヘルプで自分のプランの扱いを確かめてください。
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