「Grok Bot に毎朝の仕事を任せているけれど、裏で動く AI が Claude に変わったら、料金やデータの扱いはどうなるのだろう」。
Grok Bot の開発担当者によると、Bot 本体は10月7日から Claude Opus 5.5 への切り替えが展開されています。きっかけは同じ日の15時46分(日本時間)、SpaceX の Elon Musk 氏が X で、Grok Bot は今後、仕事ごとに最適なバックエンドのモデルを使うと投稿したことです。名前が挙がったのは Claude Opus 5.5、Midjourney、Suno です。
使う側の設定は要らず、モデルを選ぶ画面もありません。i-Style の Cursor の利用記録を発表の前後で見比べても、答えたモデルの名前は出ていませんでした。
先にまとめ
Grok Bot の本体(会話と段取りを受け持つ部分)は、10月7日から Claude Opus 5.5 への切り替えが展開されています。根拠は Musk 氏と開発担当者の X 投稿で、10月8日朝の時点で公式の文書にはまだ載っていません。
振り分けの考え方は、簡単な質問は小さく速いモデルへ、込み入った質問は大きなモデルへ、というものです。画像の Midjourney、音楽の Suno は名前が挙がった段階で、つなぎ方は発表されていません。
i-Style の Cursor の利用記録(Grok Bot の分は1,568行)では、Grok Bot の行は3つの名前でしか記録されず、発表の後も実際のモデル名は出ませんでした。
確かめておきたいのは、週の利用枠の減り方と、顧客のデータを預ける先です。公式の文書では請求は実際に答えたモデルで決まり、Opus 5.5 は Grok 4.7 より単価の高いモデルです。質の変化は、答えの分かっている依頼を毎週同じ文面で出して見ておきます。
Musk 氏の発表は、仕事ごとに裏のAIを選び直す方針。使う側の設定は要らない
発端は Musk 氏の英語の投稿です。今後 SpaceX は Grok Bot で、仕事ごとに最適なバックエンドのモデルを使うと書き、Claude Opus 5.5、Midjourney、Suno と、その他の主要な API を挙げました。最も良い結果になりそうなものを使う、という一文で結ばれています。
バックエンドのモデルとは、画面の向こうで実際に文章を考えている AI のことです。名前の挙がった Claude を作っている Anthropic は、SpaceX とは別の会社です。
Grok Bot は、SpaceXAI(xAI)が出している、仕事を任せる AI の製品です。モデルの選択や利用量の計算は、Cursor が受け持っています。
8時間ほど後の続きの投稿では、振り分けの考え方を補足しています。簡単な質問は小さく速いモデルへ、答えが込み入った質問は大きなモデルへ回す、という説明です。
Grok Bot の開発担当者は、最初の投稿を引用して、Grok Bot がアップグレードされると書きました。利用者の質問への返信では、Bot 本体は別のモデルで動くようになり、Opus 5.5 を展開している最中だと答えています。
使う側がすることは、今のところありません。公式の文書は、モデルの選択は Cursor が管理し、利用者が選ぶ画面は無いと説明しています。10月8日の朝に確かめた時点で、Claude・Midjourney・Suno の名前はまだ Grok Bot の文書に出ていません。
マメ
うちは4人の会社で、SuperGrok を1人分だけ契約しています。Grok Bot には、毎朝届く問い合わせメールの仕分けと返信の下書きを任せています。何か設定を変える必要はありますか。
ホク
設定は要りません。モデルを選ぶ画面が無いので、切り替えは向こう側で進みます。気にしておきたいのは、週の利用枠の減り方と、メールの中身がどこへ渡るかの2つです。
マメ
お客様のメールが、Claude を作っている会社に渡ることもあるんですか。
ホク
その可能性はあります。Opus 5.5 に回った依頼を、どの提供元の設備で処理するかは、公式の文書でも決まっていません。お客様との契約で預け先を決めているなら、使い続ける前に契約の文面を確かめてください。
仕事の種類ごとに、いま示されている振り分け先
仕事ごとに最適なモデルと言っても、どの仕事がどのモデルへ行くかの一覧は公開されていません。投稿と公式の文書を突き合わせると、10月8日の時点で示されている振り分け先は次の6つです。
名前まで出ているのは、Bot 本体の Opus 5.5 と、画像・音楽の2社だけです。依頼の重さで使い分けるという「小さく速いモデル」と「大きなモデル」は、どのモデルを指すのか書かれていません。
| 仕事の種類 | 示されている振り分け先 | 出どころ |
|---|---|---|
| 簡単な質問・短い依頼 | 小さく速いモデル(名前は未公表) | Musk 氏の投稿(10月8日0時4分) |
| 答えが込み入った依頼 | 大きなモデル(名前は未公表) | 同上 |
| Bot 本体(会話と段取り) | Claude Opus 5.5(展開中) | 開発担当者の返信(10月7日16時21分) |
| プログラムを書く作業 | Cursor のクラウド上の開発用エージェントへ渡せる(管理者が止められる) | 公式の文書(チーム・企業向け) |
| 画像を作る | Midjourney(名前が挙がった段階) | Musk 氏の投稿(10月7日15時46分) |
| 音楽を作る | Suno(名前が挙がった段階) | 同上 |
依頼の重さで分けると、費用と質の釣り合いが取りやすくなります。軽い確認に大きなモデルを使えば費用がかさみ、込み入った作業に小さなモデルを使えば質が落ちやすいからです。
Musk 氏が投稿に書いた目的は、最も良い結果を出すことです。どの依頼をどのモデルに回すかは、利用者ではなく Grok Bot の側が決めます。
SpaceXAI はこれまで、開発者向けのモデル一覧で、プログラム・会話・画像・音声のすべてに自社のモデルを勧めてきました。今回の発表で、Grok Bot の使い分けには他社のモデルが加わります。
表のうち画像と音楽の2行は、名前が出ただけで、中身はまだ分かっていません。
Midjourney と Suno は名前が挙がった段階。つなぎ方は発表されていない
画像の Midjourney と音楽の Suno は、どちらも Musk 氏の投稿に名前が出ただけです。提携として組むのか、外から呼び出す窓口を使うのか、いつから使えるのかは、10月8日の時点で SpaceXAI の公式の文書にも報道にも出ていません。
Suno は7月、外部の開発者向けの窓口(API)を、選んだ提携先から始めると発表した段階です(Digital Music News、7月3日)。
実際に試した人の声もあります。Musk 氏の発表から30分ほど後、X の返信で利用者の一人が、Bot に Suno で音楽を作ってと頼んだら使えないと言われた、と書いています。画像や音楽の仕事をこの2社に任せる前提で計画を組むのは、公式の案内が出てからで十分です。
Cursor の利用記録を発表の前後で見ても、答えたモデルの名前は出なかった
最適なモデルに振り分けると言われても、本当に振り分けられたのかを利用者が確かめられなければ、判断の材料になりません。そこで、i-Style で使っている Grok Bot の利用記録を、発表の前後で見比べました。
Grok Bot の利用量は、Cursor のアカウントで数えられます(公式のヘルプ)。その記録は、Cursor の利用画面に1行ずつ出ています。
10月8日の朝、プランが Pro の Cursor の利用画面から、8月1日以降の記録を全件取り出し、モデル名ごとの行数とトークン量を数えました。会話の中身は読んでいません。
記録に出た Grok Bot の名前は3つだけで、Claude や Grok 4.7 のような実際のモデル名は1行もありませんでした。行数は、9月8日から10月8日までで1,568行です。トークンは、AI が文章を数えるときの単位です。
| 利用画面での名前 | 行数 | 日数 | トークン(中央値) |
|---|---|---|---|
| grok-bot-default(標準) | 1,122行 | 13日 | 約8.0万 |
| grok-bot-automation(定期実行とみられる) | 285行 | 18日 | 約3.3万 |
| grok-bot-cua(画面操作とみられる) | 161行 | 4日 | 約1.6万 |
名前ごとに1行あたりのトークン量がはっきり違うので、Grok Bot は仕事の種類で分けて記録しているとみられます。公式の文書に名前の対応表は無く、それぞれの名前の裏でどのモデルが動いていたのかも、画面からは分かりません。
発表の後(10月7日15時46分以降)に記録された Grok Bot の行は25行で、名前別では automation が24行、default が1行です。名前は発表前と同じで、Opus 5.5 に切り替わったかどうかを示す表示はありませんでした。
公式の安全とデータの文書は、分析画面には各リクエストを処理したモデルが出ると説明しています。それでも、個人の Pro の利用画面で見えたのは、grok-bot で始まる3つの名前だけでした。
うまくいかなかったこともあります。Grok Bot のデスクトップ版(0.56.1)が画面の読み取りを受け付けず、こちらから新しい依頼を出せませんでした。簡単な依頼と込み入った依頼で振り分けが変わるかは、試せていません。
同じ画面には Claude Opus 5.5 の名前の行も136行ありました。ただ、名前が grok-bot で始まらず、発表の前日から出ていたため、Grok Bot の分とは言い切れません。数には入れておらず、上の結論も変わりません。
答えたモデルが画面で見えない以上、切り替えで費用が変わるかは、公式の料金の説明から読むしかありません。
料金と利用枠は実際に答えたモデルで決まる。Opus 5.5 は単価が高い
公式の文書には、請求は実際にリクエストを処理したモデルに従う、と書かれています。Grok Bot は契約ごとに週の利用枠が決まっていて、使い切ったあとは、従量の追加利用を有効にしている場合だけ続きます。
目安になるのは API の単価です。100万トークンあたり、Grok 4.7 は入力2ドル・出力6ドル、Claude Opus 5.5 は入力4ドル・出力20ドルです。同じ量を書かせると、出力は3倍あまりの単価になります。
ただし、Grok Bot の週の利用枠がこの単価どおりに減るのかは、発表されていません。i-Style の記録では、発表後の25行のうち20行が、利用画面の Type(種類)の欄で「Free」になっていました。画面の説明によると、「Free」は Cursor が付与した分で、週の利用枠には数えない扱いです。
発表後の行の大半が利用枠に数えられていないので、切り替えの後に利用枠の減り方が変わったかは、まだ測れていません。
当面できるのは、週の利用枠の残りを1週間ほど見ておくことです。従量の追加利用を有効にしているなら、月の上限も確かめておきます。公式のヘルプによると、上限に達しても実行中の作業は途中で止まりません。
データの行き先が増える。預け先を契約で決めている会社は先に確認
振り分け先が増えることは、データを処理する先が増えることでもあります。公式の文書は、提供元の組み合わせは時間とともに変わりうるもので、決まった提供元は保証しない、と明記しています。
記録を残さない取り決めは、Cursor がそれぞれの提供元と結んでいる既存の契約に従う、とも書かれています。ただし提供元は不正利用を見張る仕組みを動かすことがあり、引っかかったデータは調査のために保存されうる、という但し書きつきです。
使うモデルを会社として限る設定もありますが、対象は最上位の Enterprise だけです。しかも文書には、その設定(使ってよいモデルの許可リスト)が守られる保証はない、と書かれています。Grok Bot が作業に使うクラウド上のコンピューターは、今は米国で動いています。
顧客との契約で「データを預ける先」を決めている会社は、使い続ける前に契約の文面を確かめてください。公式の文書も、処理を任せる先を契約で限っているなら、導入の前に担当者へ連絡するよう案内しています。
中小企業の読み替え:モデルを選べない道具には、結果を確かめられる仕事を任せる
Grok Bot では、どのモデルが答えるかを選べず、i-Style が見た個人の利用画面でも確かめられませんでした。使い続けるかどうかは、モデルの名前ではなく、出てきた結果を人が確かめられるかどうかで決めることになります。
たとえば問い合わせメールの仕分けや返信の下書き、毎朝の情報収集のまとめは、結果を人が読んで直せます。裏のモデルが入れ替わっても、結果を人が読む仕事なら、質が落ちたときに気づく機会があります。
逆に言えば、特定のモデルでなければ困る仕事は、Grok Bot に任せないほうが確かです。ブランドの画像を決まった画風で作りたいなら、画像を作る道具を直接使います。社内で使うモデルを決めているなら、そのモデルを指定できる道具から使います。
質の変化に気づくには、答えの分かっている依頼を1つ決め、毎週同じ文面で出す方法が手堅いです。i-Style では、プログラムを書かせる AI の Codex の速さが変わったときも、同じ作業を測り直して確かめました。結果を表に1行ずつ残しておけば、振り分け先が変わった週に差が出るかを見られます。
モデルを選べない道具が増えるほど、中小企業が持っておくべきものは、モデルの知識より、任せる範囲と確かめ方の決めごとだと見ています。Grok Bot にどこまで任せるかは、前回の記事で整理しています。
まとめ:設定はそのまま、確かめる場所2つと質の見方を決めておく
Grok Bot は、仕事の重さや種類に応じて裏のモデルを選び直す方針に変わり、Bot 本体は Claude Opus 5.5 への切り替えが展開されています。Midjourney と Suno は名前が挙がった段階です。
使う側の設定は要りません。ただ、i-Style の利用記録では、発表の後も答えたモデルの名前は見えませんでした。確かめておく場所は、週の利用枠の減り方と、顧客のデータを預ける先の2つです。
質の変化は、答えの分かっている依頼を毎週同じ文面で出して見ておきます。任せる仕事は、モデルが変わっても結果を人が確かめられるものに絞っておきます。当面はこの使い方で足りると見ています。
確かめた資料と、試せなかった振り分けの確認・企業向けの画面
発表は Musk 氏の X 投稿2本と Grok Bot 開発担当者の投稿・返信、公式の説明は Grok Bot の文書(安全とデータ・設定・チーム・企業向け)と Cursor の料金のヘルプから取りました。単価は各社の公式ページ、反応は Gizmodo(AOL 転載)・tbreak・X の返信からで、どれも10月8日に確認しています。
利用記録は、10月8日9時30分ごろに Cursor の利用画面の元データを取り出して数えました。Grok Bot の行は名前が grok-bot で始まるものだけを数え、トークン量は画面の「Tokens」の欄と同じ値です。
表の中央値は、トークンの値が入っている行だけで出しています(default 1,053行・automation 142行・cua 161行)。投稿の時刻は、投稿の番号から日本時間に直しています。
試せなかったことは4つです。新しい依頼を出して振り分けを確かめること、Teams や Enterprise の分析画面、Midjourney と Suno を Bot から使うこと、切り替え後の利用枠の減り方です。
i-Styleに相談する
i-Styleの「まるっとAI」では、AI活用支援のひとつとしてお手伝いできます。始めやすいのは次の2つです。1つは、Grok Bot のように仕事を任せる AI に、どの仕事を渡し、どこで人が確かめるかを一緒に決めること。もう1つは、顧客のデータを扱う仕事で、使ってよい AI の範囲を社内のルールにすることです。
お問い合わせページへ arrow_forward相談するほどでもなければ、右下のチャット窓口で「うちの仕事のうち、Grok Bot に任せられるのはどれか」を聞くところからでも十分です。