「うちが毎月払っているClaude代も、補助金で戻ってくるのでは」。2026年9月に入って、そう読める話がSNSで広がりました。AIの導入を考えると費用の話が必ずついてくるので、気になっている方は多いはずです。
先に答えを書きます。制度そのものは実在します。名前は「デジタル化・AI導入補助金2026」。旧・IT導入補助金です。ただ、Claudeの請求書を持っていけば補助が出る、という仕組みではありません。
2026年9月8日に公式サイトを開いて条件を確認しました。ここでは、契約する前に知っておかないと損をする3つだけを並べます。申請より先に契約すると対象外になること、申請はIT導入支援事業者と組んで行うこと、そして汎用のAIだけでは申請の形になりにくいことです。
先にまとめ
補助の対象になるのは「登録されたITツール」であって、Claudeという製品名そのものではありません。登録申請をするのはAnthropicではなく、日本のIT導入支援事業者です。通常枠の補助率は1/2以内(条件を満たすと2/3以内)、補助額は業務プロセス1つ以上で5万円以上150万円未満。クラウド利用料は最大2年分が対象経費に入ります。
いちばん大きい落とし穴は、交付決定を受ける前に発注・契約・支払いをしてしまうことです。ここを踏むと補助金は受け取れません。通常枠の5次締切は2026年9月29日(火)17:00(2026年9月8日に公式サイトで確認)。すでにAIの契約がある会社ほど、順番の確認が先になります。
対象になるのは「登録されたITツール」で、製品名ではない
最初にほどいておきたいのが、ここです。この補助金には、対象になるソフトウェアを事前に登録する仕組みがあります。登録するのは、ソフトを作っている会社ではありません。公式サイトには、IT導入支援事業者が「IT事業者ポータル」からITツールの登録申請を行う、と書かれています。
流れは、IT導入支援事業者としての登録申請、採択、そのあとにITツールの登録申請と承認、という順番です。そして「登録されていないITツールは交付申請をすることができません」と明記されています。つまり、まず支援事業者がいて、その事業者が登録したツールの中から選ぶ、という構造になっています。
生成AIについても記述があります。所定の業務プロセスを持つものであれば、生成AIやそれ以外のAI技術の機能を搭載したソフトウェアも登録が可能、という書き方です。AIだから対象外、という制度ではありません。
ここから逆算すると、Claudeが誰かの登録ツールの中に含まれている、という形はあり得ます。ただしそれはAnthropicが直接登録したものではなく、日本のIT導入支援事業者が組み立てたツールとして載っている、ということになります。SNSではClaudeが対象になったと読める投稿が回っていますが、制度の側から見ると、指しているものが少し違うわけです。
実際に登録があるかどうかは、公式サイトのITツール検索でご自身で引いてみてください。当社では、この記事を書いている時点で検索結果の中身までは確かめられていないので、件数や特定の事業者名は書きません。ここは伝聞で埋めないほうが安全だと見ています。
引くときに見るのは3つです。ツールの名前、どの業務プロセスの区分で登録されているか、そしてどのIT導入支援事業者が登録しているか。名前が一致しているかどうかだけで決めると、中身が思っていたものと違った、ということが起こります。
この3つを控えてから問い合わせると、最初のやり取りが短く済みます。担当していて感じるのは、制度の中身そのものより、この手前の確認のほうに時間を取られるということです。
ここからは、ご相談でよく出る質問を、i-Styleのキャラクターであるマメとホクの会話にしています。
マメ
うちは5人で、Claudeを3人分もう払っています。年払いに切り替えようかと話していたところです。これは関係のある話ですか。
ホク
関係があります。切り替えを止めてください、という意味で関係があります。公式には、交付決定の前に発注・契約・支払いをした場合は補助金の交付を受けられない、と書かれています。補助金を狙うつもりなら、いま新しく契約を動かすほうが不利になります。
マメ
すでに払っている3人分は、あとから乗せられますか。
ホク
公式の順番を読むかぎり、交付決定より前に契約した分を後から対象にする形にはなっていません。ただ個別の扱いは断定できないので、そこはIT導入支援事業者と事務局に確認してください。i-Styleでも、そこは自分たちで判断しないようにしています。
通常枠の条件を、数字で押さえる
制度の形が見えたところで、金額の話に移ります。以下は通常枠の条件です。枠は他にもありますが、AIツールの導入で最初に見ることになるのはここです。
補助率は1/2以内。条件を満たすと2/3以内になります。この条件が細かくて、令和6年10月から令和7年9月までの間で3か月以上、令和7年度改定の地域別最低賃金未満で雇用している従業員が全従業員の30%以上であることを示した場合、と書かれています。多くの会社では1/2で見ておくほうが現実的だと思います。
| 項目 | 公式表記(2026年9月8日確認) |
|---|---|
| 補助率 | 1/2以内(条件を満たす場合は2/3以内) |
| 補助額(1プロセス以上) | 5万円以上150万円未満 |
| 補助額(4プロセス以上) | 150万円以上450万円以下 |
| ITツール要件 | 1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請すること(汎用プロセスのみは不可) |
| 対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)ほかオプション・役務 |
| 5次締切 | 2026年9月29日(火)17:00 |
出典: デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト 通常枠ページ/スケジュールページ(2026年9月8日確認)
この表でいちばん目が留まるのは、おそらく「クラウド利用料(最大2年分)」の行だと思います。買い切りのソフトだけでなく、月額で払い続ける形のものも対象経費に含まれる。だからサブスクリプションで使うAIの話が出てくるわけです。
ただし、その行の2つ上を見てください。「汎用プロセスのみは不可」と書かれています。クラウド利用料が対象になることと、AIの席料がそのまま通ることは、別の話です。ここを混ぜて読むと、あとの工程で止まります。
なお、Claude本体のプランと価格はこの記事の範囲外です。ドル建ての金額や、どのプランからClaude Codeが使えるのかは別記事に整理してあります。補助金の側とAI側で、確認する場所が違うと考えてください。
先に契約すると、そこで対象外になる
この記事でいちばんお伝えしたいのが、この節です。公式サイトの手続きの説明には、こう書かれています。
「交付決定前に発注・契約・支払い等を行った場合は、補助金の交付を受けることができません」。太字でも赤字でもなく、手続きの説明の中に淡々と書かれている一文です。
発注・契約・支払いができるのは、交付申請を完了して、事務局から交付決定を受けたあとです。順番が決まっていて、前後を入れ替えられません。手続きの都合というより、この補助金の作り方そのものです。
怖いのは、この話を聞いた人がいちばん取りやすい行動が、まさに禁止されている動きだということです。「補助金が出るなら、いまのうちに人数分そろえておこう」「年払いにしておこう」。急いで契約を動かすほど、対象から外れます。
順番が入れ替わるのは、ツールを決めるのが先で、制度の確認が後ろに回るときです。現場では、そちらのほうが自然な進み方に見えるのではないでしょうか。補助金を使う前提があるなら、契約のボタンを押す人を先に一度止めておくほうが安全です。
そのうえで、すでに契約がある場合にどう扱われるのかは、公式の記述だけでは読み切れません。当社でも断定はせず、支援事業者と事務局に確認する項目として扱っています。
汎用AIの席だけでは、申請の形になりにくい
もう1つ、事前に知っておくと動きが変わる条件があります。ITツールの要件として、1種類以上の業務プロセスを保有するソフトウェアを申請すること、と決まっていて、括弧書きで「汎用プロセスのみは不可」と添えられています。
噛み砕いて言うと、こういうことです。何の仕事をどう変えるのかが先にあって、そのためにソフトを入れる。この形になっていないと申請の器に乗りません。AIの席を人数分買うこと自体は、業務プロセスではないわけです。
逆に言えば、AIを使うこと自体が排除されているわけではありません。前の節で見たとおり、業務プロセスを持つソフトであれば生成AIの機能を積んでいても登録は可能、と公式に書かれています。問題は、汎用の対話AIを単体で切り出したときの形です。
ここは制度の細かい話に見えて、導入する側にとってはむしろ助かる制約だと捉えています。業務プロセスを1つ決めるという作業は、補助金がなくてもやったほうがいい作業だからです。どの仕事をAIに渡すのかが決まらないまま契約だけが増えていくとき、その先は補助金の有無にかかわらず止まります。
マメ
業務プロセスと言われても、うちは5人で全員が何でもやっています。どこを1つと数えるんですか。
ホク
人ではなく、毎週繰り返している作業のほうを数えてください。見積を作る、受注の内容を転記する、請求書を照合する。担当が分かれていなくても、作業としては分かれています。
マメ
どの作業を選ぶかは、支援事業者に決めてもらうものですか。それとも先に自分たちで決めておくものですか。
ホク
先に自分たちで書き出しておくほうが早く進みます。手元に候補が3つあると、相談が「どれを使うか」ではなく「どれを先にやるか」から始まります。書き出す作業自体は、今日30分あればできます。
締切から逆算すると、9月にやることは少ない
日程も見ておきます。公式のスケジュールページによると、通常枠の5次締切は2026年9月29日(火)17:00。交付決定日は2026年11月9日(月)の予定です。事業実施期間は交付決定から2027年4月30日(金)17:00まで、事業実績報告の期限も同じ日になっています。
6次以降の日程は、この記事を書いている時点では公表されていません。公式サイトには、確定した募集回のスケジュールのみを公表し、以降は随時更新する、という趣旨の説明があります。今回の締切に間に合わないからといって終わりではない、という読み方はできます。
この日程を逆から並べると、話が単純になります。契約していいのは11月9日以降です。だとすると、9月のうちにやることの中に「ツールを買う」は入りません。入るのは、業務プロセスを決めることと、組む相手を探すことの2つだけです。
支援事業者の探し方は公式のITツール検索とIT導入支援事業者の検索からになります。ここで特定の事業者をお勧めすることはしません。自社の業務に近い登録ツールを持っているかどうかで見るほうが、名前で選ぶより外れにくいと感じています。
なお、締切や補助率は制度の運用の中で変わります。この記事の数字はすべて2026年9月8日に公式サイトで確認したものです。動く前に、必ずご自身で最新の表記を見てください。
補助金より先に決めることがある
ここまでの条件を並べると、順番が1本に決まります。業務プロセスを決める、登録ツールを持つ支援事業者と組む、交付申請をする、交付決定を受ける、それから契約する。この順番を守れないと、どこかで止まります。
i-Styleでは、補助金があるからAIを入れる、という順番はお勧めしていません。ご相談でも、そこは先にお伝えしています。補助金は費用の一部を後ろから支えるものであって、何を任せるかを決めてくれるものではないからです。汎用AIの席料だけを切り出して申請しようとすると、プロセス要件や支援事業者とのやり取りで止まる場面が多くなると見ています。逆に、任せる作業が1つ決まっている会社は、補助金があってもなくても前に進みます。半年後に効いてくるのは、そちらのほうです。
現実解としては、9月のうちに繰り返し作業を3つ書き出しておくことだと思います。同じ作業を2度やらないための書き出し方と、中小企業のAI自動化の進め方に手順を書いてあります。書き出したものは、補助金の申請でも、支援事業者との打ち合わせでも、そのまま使えます。
採択されるかどうかは、ここでは何も約束できません。制度の条件を満たすことと、審査を通ることは別だからです。この記事でお伝えできるのは、条件を満たさない動き方を先に避けておく、というところまでです。
参考にしたソース
制度名と全体像は、デジタル化・AI導入補助金2026の公式ポータル(it-shien.smrj.go.jp)から取りました。補助率・補助額・対象経費・ITツール要件は通常枠のページ(it-shien.smrj.go.jp/applicant/subsidy/normal)、日程はスケジュールのページ(it-shien.smrj.go.jp/schedule)です。
交付決定前の契約についての引用は、交付決定後の手続きのページ(it-shien.smrj.go.jp/aftergrantdecision/measures)から。ITツールの登録の仕組みは、IT導入支援事業者向けのページ(it-shien.smrj.go.jp/itvendor/procedure/ittool)を見ています。登録されているツールを引くのは、ITツール検索(it-shien.smrj.go.jp/search)です。
いずれも2026年9月8日に確認しました。この話題はSNS発の投稿から広がりましたが、投稿の内容は事実の根拠にしていません。金額・締切・要件は必ず公式サイトの表記でご確認ください。
i-Styleに相談する
補助金の申請そのものは支援事業者の担当ですが、その前段の「何の作業をAIに渡すか」は自社で決めることになります。i-Styleでは、いまの手順を並べて、任せる作業と人が持つ作業を分けるところから一緒に進めています。作業1つからで構いません。
お問い合わせページへ arrow_forwardそこまでではない、という段階なら、botに聞いて論点を整理するところからでも間に合います。